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第85課(新版):慣用表現③:熟語②「依頼表現」「懇願の呼応の副詞」「古風な禁止表現」

第85課:慣用表現③:熟語②「依頼表現」「懇願の呼応の副詞」「古風な禁止表現」

 みなさん、こんばんは。齶田浦です。

 

 今回も慣用表現の勉強となっております。内容的には、「~てください」とか「~てくれませんか」というような、依頼の表現を扱っております。

1.依頼表現

 

 

①「~てくれ。」→「~てけれ。」

②「~てくれない(か)?」→「~てけねぁ(が)?」

③「~てもらえないだろうか?」→「~てけらえねぁべが?」

①悪いが少し我慢してくれ。→悪りたって少し我慢してけれ

②悪いが少し我慢してくれない(か)?→悪りたって少し我慢してけねぁ(が)

③悪いが少し我慢してもらえないだろうか?→悪りたって少し我慢してけらえねぁべが

説明:①→②→③の順に、丁寧度が増す。なお、「けらねぁべが」は、「けらねぁべが」でも問題ない。我が家含む市内では「れ」の部分が「え」に変化するのが普通なだけ。

 

補足①:敬譲の助動詞「す」とともに用いると、以下のような表現も可能。

①「~てくれませんか?」→「~てけねぁすか?」

②「~てくれませんでしょうか?」→「~てけねぁすべが?」

③「~てもらえませんでしょうか?」→「~てけらえねぁすべが?」

①すみませんが少し我慢してくれませんか?→悪りたって少し我慢してけねぁすか

②すみませんが少し我慢してくれませんでしょうか

→悪りたって少し我慢してけねぁすべが

③すみませんが少し我慢してもらえませんでしょうか

→悪りたって少し我慢してけらえねぁすべが

説明:同じく、①→②→③の順に、丁寧度が増す。これも同様の理屈で、「てけらねぁすべが」でも可。地域差を無視すればむしろ「れ」の方が普通の秋田弁と言えるだろう。

 

補足②:「~てください。」→「~てたんえ。」と言う。但し、余り使わない。

ちょっと待ってください。→ちょっと待ってたんえ

そう怒らないでください。→そー怒らねぁンでたんえ

 

練習問題1:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。

(1)もー少し待っ(てもらえないだろうか)?(2)悪りたって車ンで迎[むげ]ぁに来(てもらえないだろうか)?(3)誰さも言わねぁ(でください)。(4)もー少し待っ(てください)。(5)そー怒らねぁ(でくれ)。(6)まず見でみ(てくれ)。(7)悪りたって銭[じぇん]貸し(てくれない)?(8)俺いねぁうぢ留守番し(てくれないか)?(9)秋田弁俺さも教[おへ](てくれませんか)?(10)ちょっと道案内し(てくれませんか)?(11)そごまンで送ってっ(てくれませんでしょうか)?(12)こえどごあえさ渡し(てくれませんでしょうか)?(13)なんとがひとっつ、一晩け゚ばり貴方家さ泊まらへ(てもらえませんでしょうか)?(14)本当に申し訳ねぁンども、銭っこちょっとばーり俺さ貸し(てもらえませんでしょうか)?

 

 

2.懇願の呼応の副詞:「どうか~」

①「どうか~」→「なんとが~」「なんとがして~」

②強調「どうかどうか、~」→「なんとがひとっつ、~」

どうか手伝ってくれ。→なんとが(して)手伝ってけれ。

どうか手伝ってくれないか?→なんとが(して)手伝ってけねぁが?

どうかどうか、手伝ってもらえないだろうか?

なんとがひとっつ、手伝ってけらえねぁべが?

説明:これらの懇願の副詞は、本課の1で習った依頼表現と一緒に使うことができる。②の「なんとがひとっつ」は、多分標準語の「どうかひとつ」と対応する言葉だろう。要するに「どうか」の強調バージョンみたいなもの。

 

練習問題2:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。

(1)(どうか)もー少し待っ(てくれ)。(2)(どうか)もーちょっとばり我慢して(てくれ)。(3)(どうかどうか、)見捨てねぁ(でくれ)。(4)(どうか)もー少し待っ(てくれない)?(5)(どうか)もーちょっとばり我慢して(てくれないか)?(6)(どうかどうか、)もー少し待っ(てもらえませんでしょうか)?(7)(どうか)もーちょっとばり我慢して(てもらえないだろうか)?

3.古風な禁止表現「~てくれるな!」

標準語の古風な禁止表現「~てくれるな!」→「~てけな!」と言う。

そんなに笑ってくれるな!→そんでぁに笑ってけな

私を失望させてくれるなよ?→おえどご失望さへでけなや?

説明:文字通り「てくれる」→「てける」、禁止「な」→「な」と規則通り対応した結果、「~てくれるな!」→「~てけな」となった。「けるな」の「る」の脱落は我が家含む秋田市内だからだろう(第75課参照)。地域差を無視するなら「~てけるな」が普通のはずである。なお、この表現は古老しか使わない。秋田弁としても古風な言い回しなのだろう。

練習問題3:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。

(1)おえどご馬鹿にし(てくれるな)!(2)ははは、そーおが笑わっ(てくれるな)せぁ。(3)そんでぁにまじまじど俺らどご見(てくれるな)でぁ。(4)そーはえぁぐ死ん(でくれるな)や?

練習問題解答:

なお、解答はすべて秋田市内訛りにしてある。

練習問題1:(1)てけらえねぁべが(2)てけらえねぁべが(3)ンでたんえ(4)てたんえ(5)ンでけれ(6)でけれ(7)てけねぁ(8)てけねぁが(9)でけねぁすか(10)てけねぁすか(11)てけねぁすべが(12)てけねぁすべが(13)でけらえねぁすべが(14)てけらえねぁすべが

練習問題2:(1)なんとが/なんとがして・てけれ(2)なんとが/なんとがして・でけれ(3)なんとがひとっつ・ンでけれ(4)なんとが/なんとがして・てけねぁ(5)なんとが/なんとがして・でけねぁが(6)なんとがひとっつ・てけらえねぁすべが(7)なんとが/なんとがして・でけらえねぁべが練習問題3:(1)てけな(2)てけな(3)でけな(4)でけな

なお、もう分かり切ったことだろうが、一応指摘しておくと、本課で習った依頼・禁止表現の「~て…」は何れも接続助詞「て」なので、「き」「し」「っ」の直後以外は「で」と濁る。

終わりに

 以上で今回の勉強はおしまいです。

 

 ではまた。へばな。

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